(英エコノミスト誌 2023年11月18日号)

米国は本当にこの男を必要としているのか

大統領選でのトランプ氏の勝利は何を意味するのか。

 世界に大きな影が忍び寄っている。

 本誌エコノミストは来年を展望する特集記事「2024年の世界」を今週号に掲載した。

 今年で38回目となる年に1度の企画だが、ドナルド・トランプ氏が2024年に影を落とすほど本誌の分析に大きく影を落とした人物はただの一人もいなかった。

 来年11月の米大統領選挙でトランプ氏が勝利する確率は五分五分だという認識が実感され始めている。

予備選で圧倒的優位に立つ前大統領

 共和党の予備選挙に向けた戦いで、トランプ氏はほかの候補者を圧倒している。

 いくつかの世論調査では、いわゆる激戦州で現職のジョー・バイデン大統領を上回る支持率を得ている。

 ニューヨーク・タイムズ紙が実施した調査では、有権者の59%が経済の面でトランプ氏を信頼していると答え、わずか37%のバイデン氏に大差を付けた。

 少なくとも予備選挙の段階では、民事訴訟の被告になったり刑事事件で起訴されたりしていることは、トランプ氏を強くするばかりだった。

 民主党は数十年にわたってアフリカ系やヒスパニック系有権者の支持を頼りにしてきたが、今ではそのかなりの数が同党を見捨てつつある。

 今後12カ月間でどちらかの候補がつまずけば、その時点でレースは終わり、それを受けて世界がひっくり返る恐れもあろう。