3分の1は1年以内で手放す

 1998年末以降の保有銘柄報告書に登場する銘柄は199銘柄ですが、2023年6月末現在で保有しているのは46銘柄ですから、残りの153銘柄はすでに手放してしまったことになります。このうち1回登場しただけで消えてしまった銘柄が24もあります。2回登場は12銘柄、3回登場は5銘柄、4回登場は9銘柄です。

 図5をご覧ください。1回登場するたびに3カ月保有したと仮定しますと、合わせて50銘柄が1年以内に売却された計算です。バークシャー・ハザウェイによる取得が明らかになり、「バフェット銘柄」などともてはやされながらも、約3分の1は1年以内に見切られている計算になります。

■図5:株式の保有期間別銘柄数

バークシャー・ハザウェイが保有する株式の保有期間別銘柄数
拡大画像表示

 バフェットさんは真に長期保有の価値がある銘柄を見定めようと懸命になる一方、長期保有の価値がないと感じたら、すぐに売却することを基本方針にしています。日本の「見切り千両、損切り万両」に相当する相場格言が米国にあるのかどうかは知りませんが、将来性に疑問を感じつつ、いつまでも保有し続けるような投資はしないということです。

 153銘柄の平均保有期間は3.8年です。「割安株の長期投資家」といわれている割には、意外と短いと感じませんか。売却した後の値動きから判断すると、「売らなければよかった」といったこともあるのかもしれません。しかし、バフェットさんは企業としての投資価値に疑問を感じつつ、株価のリバウンドを期待して持ち続けようなどとは考えないようです。保有株を売却しようかどうか迷ったときに、参考にしてほしい話です。

>>前編から読む
新NISAはバフェットに学べ(前編)勝ち筋は「分散」ではなく「集中」投資

バフェット解剖 世界一の投資家は長期投資ではなかった』(前田昌孝、宝島社新書)