ポルトガル南部の町、ファーロの路地で、車の上に乗っていた三毛猫に声をかけると、猫道を案内してくれました。三毛についてすごく細い道を行くと、城塞の上に出ました。ここで遊ぼうと三毛がでんぐり返しをしたとき、水平線上に立ち込めた雲の間から夕日が差しました。

 ブータンの国際空港があるパロの家で、子猫が丸くなって寝ていたので、全体の模様を見てみたいと思いました。でも、子猫を起こすわけにはいきません。そうしたら「家の中に、お父さん猫がいるよ」と案内されました。きっと子猫も似た柄なのでしょう。

 さて、私の「ぐうたら猫ベストワン」は、タイのサムイ島で出会った猫です。

 スーパーマーケットの自動ドアが開けば店の中から冷たい空気が流れてくることを知っていて、待ちかまえているのです。ほかの猫たちは、涼しい場所を探したり居心地のよい場所へ移動したりしているというのに。この猫はそれすらしないで、出入りの多い店のドアの前で涼んでいるなんて、ぐうたら猫のかがみと言えるのではないでしょうか。

新美 敬子
にいみ けいこ(ウィキペディア) 愛知県豊橋市生まれ。犬猫写真家。世界を旅して出会った猫や犬と人々との関係を写真とエッセイで発表し、人気を得る。30年以上にわたり年に数回、海外へ撮影旅行に出かけている。代表作『旅猫』(講談社・フォトルピナス)をはじめ、『マルタの猫』『すて猫カテキン』『猫の旅 地中海』『犬を旅する。』『世界の看板にゃんこ』(すべて河出書房新社、電子版あり)、『猫のハローワーク』『猫のハローワーク2』『世界のまどねこ』(講談社文庫)など、著作は50作を超える。ブログ「世界のまどねこ」(うちの猫や旅先で出会った猫、犬の写真。ほぼ日記。)はこちら

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