岸田首相はインボイスは適正な課税に必要な制度と説明するが・・・(写真:共同)
  • 10月1日から始まった消費税納税の新方式「インボイス(適格請求書等保存方式)」。多くの事業者で制度導入後、初の請求書作成や経費精算の時期を迎えている。
  • 既にフリーランスの間では、インボイス登録をした人・していない人の間で、消費税負担をめぐり不公平感が生じている。
  • 経理部門はインボイス番号(適格請求書発行事業者登録番号)の登録と確認に追われている上に、要件を満たさない領収書も持ち込まれ、混乱を極めそうだ。

(種市房子:ライター)

【ケース1】不満をぶちまけるホステス

 Aさんは都内のスナックでホステスとして働く。スナックと業務委託契約を結んでおり、これまでは免税事業者(消費税の申告・納税を免除された事業者で、年間売上高が1000万円以下)との位置付けだった。

 しかし、インボイス制度開始を前に店側から「インボイス登録をしてほしい。免税事業者の場合、消費税分だけ報酬を減らしたい」と言われた。例えば1カ月の報酬が55万円(消費税10%込み)だった場合、インボイス登録をしないと10月以降は消費税10%分=5万円を差し引いた50万円しか支払ってもらえないということだった。

「インボイス登録をすると消費税の申告・納税の負担が発生する。けれども登録しないと店とぎくしゃくする。仕方がないか」と、9月末までに急いでインボイス登録をした。

 しかし、10月になって、免税事業者にとどまった同僚のBさんに聞くと「インボイス登録をしなくても、結局、報酬は減らされないことになった」という。

 この結果、AさんとBさんが同じ報酬55万円(税込)を受け取ったとしても、Aさんだけが消費税を納めなければならなくなった。事業者によっては負担軽減の経過措置はあるが、「インボイス登録した人が馬鹿を見る」とAさんは不満だ。

 では、免税事業者のBさんの消費税はだれが負担することになるのだろうか。