8割以上の男女がいずれ結婚したいと考えている(写真:アフロ)

「恋愛は面倒だが、いつか結婚したい」と考える若者が増えている。「恋愛をしないのに、どうしたら結婚できるのだろうか?」と違和感を覚える人も少なからずいるだろう。現在は、恋愛の先に結婚があるという考え方が「普通」なのだ。
 
 しかし、「おひとりさま」や「草食系男子」などの言葉を世に広めた牛窪恵氏(世代・トレンド評論家)は、「恋愛結婚は日本では四半世紀の歴史しかない」、そして「恋愛と結婚は“混ぜるなキケン”だ」と語る。

 なぜ恋愛と結婚は切り分けて考えるべきなのか。恋愛をしないで結婚をすることができるのか──。『恋愛結婚の終焉』(光文社新書)を上梓した牛窪氏に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)

──「恋愛をして結婚をする時代は終わった」「恋愛と結婚を切り分けて考えよう」と、書籍を通して呼びかけています。なぜそのような発想に至ったのでしょうか。

牛窪恵氏(以下、牛窪):私は2015年に『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)という本を出版しました。

 そのころ、「恋愛しない理由は?」を聞く内閣府の調査や私の取材に対し、多くの若者が「恋愛が面倒だから」と答えていました。その本にも書きましたが、確かに彼らが言うように、現代は多くの恋愛リスクが存在し、「恋愛はコスパが悪い」のも納得できると感じました。

 一方で、2021年に厚生労働省の第三者機関が発表した報告書「第16回出生動向基本調査 報告書」(2021年)によると、「いずれ結婚するつもり」と考える18~34歳の未婚者の割合は、男女ともに80%を超えています。

 さらに、同報告書では夫婦が最終的に産む子の人数を示す「完結出生児数」(結婚持続期間15~19年)が、2人程度で1977年以来、ほぼ横ばい状態であることも示しています。

 結婚したカップルが、いまだに平均で2人程度の子どもをもうけているのですから、ここまで少子化が進んだ原因は、結婚した後の出生児数の減少より、結婚するカップル自体が減ったことにあるのは明らかです。

 日本では、婚外子が相変わらず2%程度しかいませんから、子どもを持つ以前、つまり結婚するカップルが減ってしまえば、おのずと子どもの数も減っていきます。その中で生涯未婚率が右肩上がりで推移しているのはご存じの通りですが、先ほど申し上げたように、「いずれ結婚するつもり」と考える未婚の男女は決して少なくないのです。

 私は親が熟年離婚しているので、結婚が万能なシステムだとは思いませんが、8割以上の若者が「いずれ結婚するつもり」だと考えているのに、結婚の手前の「恋愛が面倒」だという現状がある。恋愛しないと結婚できない。だから無理に恋愛しなければと焦る。そんな恋愛結婚の呪縛から、若い世代を解放したいと考えました。

 社会学者で『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』(光文社新書)などの著書もある、中央大学の山田昌弘教授は「結婚したいが何らかの理由で結婚できない未婚者に対する支援が少子化対策として急務である」と述べています。

 私は、「何らかの理由」の一つが「恋愛は面倒だ」という若者の価値観であると感じています。調べてみると、脳科学的にも恋愛と結婚は“混ぜるなキケン”であるとのこと。歴史的にも、もともと「恋愛」と「結婚」は分けて考えられていたことが分かりました。

──なぜ今、「恋愛」と「結婚」を切り分けて考えるべきなのでしょうか。