(英エコノミスト誌 2023年9月23日号)

国防相の任を解かれたとされる李尚福氏(8月15日撮影、モスクワ国際安全保障会議で、写真:TASS/アフロ)

習近平氏が選んだ幹部が次々と失脚している。これは習氏の人選について何を物語るのか?

 中国の習近平国家主席はかつて、有能な人材を育成する能力によって政党や国の「栄枯盛衰がおおかた決まる」と語った。

 今年3月に中国政府の大々的な人事刷新が行われた後、政府系通信社の新華社は、この人選のプロセスがいかに綿密だったかを示すことを狙った記事で上記の言葉を引いた。

 しかし、この人事で昇格した最高幹部のうち2人が6月下旬以降に姿を消した。

 1人目は秦剛前外相。2人目は李尚福国防相(陸軍上将)だ。

 失脚と思しき転落の早さはまさに衝撃的だった。幹部の失脚が中国政治について投げかける疑問は大きい。

外相に続いて国防相も動静不明

 中国共産党や習氏の支配が揺らぐ兆しは見えない。国営メディアからは、習氏へのお追従が変わることなく流れてくる。

 習氏は9月9、10両日にインドの首都デリーで開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に姿を現さなかった。過去に例のない欠席だ。

 だが9月16、17日には、7月後半に秦氏に代わって外相になった王毅氏がマルタで米国のジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)と会談した。

 ブルームバーグの報道によれば、2人はこの席で、11月にサンフランシスコでアジア太平洋諸国の首脳会議が開かれる際に習氏とジョー・バイデン大統領の会談をセットできないか議論した。

 中国の軍事活動も影響を受けていないように見える。

 9月17、18日には中国の戦闘機およそ100機が台湾周辺を飛行した。これだけ限られた時間内にこれだけの数の戦闘機が飛んでくるのも異例なことだ。

 だが、国家と軍の機構の最上層部の入れ替わりは異様に速くなっている。国家主席に就任してからずっと粛清を続けてきた習氏の基準に照らしてもそうだ。

 国防相の李尚福氏は8月29日に中国アフリカ平和安全フォーラムに出席したのを最後に、公の場に姿を見せていない。