「タイパ(タイムパフォーマンス)が悪い」からと読書を敬遠する人が増えているが、本に限らず何かをじっくり読むと、知識以上に得られるものは少なくない。なにより「言葉を扱う能力」が劇的に向上する。
新聞記者、編集者、作家として20年にわたり「文章」を扱ってきた文章のプロが実践する「丁寧に読む面白さと気持ちよさ」とは。『ちゃんと「読む」ための本 人生がうまくいく231の知的習慣』(PHP研究所)を上梓した奥野宣之氏の書籍アプローチ法。
(*)本稿は『ちゃんと「読む」ための本 人生がうまくいく231の知的習慣』(奥野宣之、PHP研究所)の一部を抜粋・再編集したものです。
(奥野 宣之、著作家・ライター)
「テーマと切り口」
まず、本を買うときは「テーマと切り口」に注意して選ぶようにしてください。
小説やマンガなどのフィクションではなく、よく知らない分野について学んだり、仕事のヒントになるような知見を求めたりといった「知識の本」の場合です。こういうジャンルには、必ず「テーマと切り口」があります。
たとえば、社会人向けの英語勉強法の本をざっと見てみましょう。
例文や会話例を「読んで覚える」「聞いて覚える」といったよくある学習法があるかと思えば、「海外ドラマで覚える」「アメリカ大統領の演説から学ぶ」「英語日記で身につける」といった具合に、さまざまなアプローチが出てきます。
つまり、英語勉強法という「テーマ」にいくつもの「切り口」がある。
こういった状況は、登山にたとえてみるとわかりやすいと思います。テーマが「山」で切り口は「ルート」です。
英語や歴史、健康法、お金、アメリカ、中国といったメジャーなテーマ(大きな山)には、複数の切り口(登頂ルート)がある。スニーカーでも大丈夫な一般向けルートもあれば、上級者にしか勧められない険しいルートもある。ひたすらヤブの中を進んでいくような変態的なルートもあります。
では、初めて「英語勉強法」という山に登るなら、どのルートを選ぶべきか。もちろんバッチリ整備された通常ルートです。
登山では、いちばんよく用いられるルートのことを「ノーマルルート」と呼びます。富士山でいえば、登山者の6割が使う五合目駐車場からのコースがノーマルルート。その他のルートは「バリエーションルート」と呼ばれ、ノーマルルートに飽き足らなくなった上級者向きの経路です。
本を選ぶときも「まずはノーマルルートから」です。