ビリー・ジョエル 写真=REX/アフロ

(小林偉:大学教授・放送作家)

新録アルバムリリースは30年前

 ビリー・ジョエルというアーティストは、非常にユニークですよね。

 1970年代初頭から1990年代に至るまでの20年余に、「ピアノマン」「素顔のままで」「ロックンロールは最高さ」「あの娘にアタック」などなど、数多くの名曲・ヒット曲を送り出してきた彼ですが・・・1993年に通算14作目のアルバム(ライブも含む)『リヴァー・オブ・ドリームス』をリリースして以降、もう30年に渡って新録スタジオアルバムのリリースはありません。

 この間、2001年にクラシック作品『ファンタジー&デリュージョンズ』を、2007年に「オール・マイ・ライフ」という曲をひっそりと発表した以外は、ベストアルバムや映画のサウンドトラックに幾つかのカバー曲を提供しただけ。“ソングライター”としてはほぼ引退状態ですが、“シンガー”“ミュージシャン”として今も精力的にライブ活動を行っているというユニークさなのです。

 そんなビリー・ジョエルが1989年に放った大ヒット曲「ハートにファイア(原題:We didn’t start the fire)」が今、再び注目を浴びているんですよね。

 キッカケは、今年6月30日にアメリカのバンド、フォール・アウト・ボーイが、この曲の続編?ともいうような作品を発表したことです。

 そのお話をする前に、「ハートにファイア」について触れておきましょう。