軍とFSBに嫌われたワグネル
──ロシア国内では、ワグネルはどのような受け入れられ方をしているのでしょうか。
廣瀬:ワグネルは本来、表に出てきてはいけない組織ですが、今回の戦争で脚光を浴びるようになりました。例えば、東部バフムートの戦いで成果を上げ、プーチン大統領は称賛していました。
ワグネルがいなければロシアは「すでに負けていた」という専門家も多数います。ロシア人でワグネルの存在を認識していない人はほとんどいません。
ただ、報道ではワグネルの進軍を歓迎しているような市民の映像もありましたが、全員ではないと思います。政府に対して閉塞感を抱いていた一部の層はワグネルを支持しているかもしれませんが、「しょせん非合法な組織で信じられない」と言っている人たちも少なくありません。
──非合法ながら存在感を増した民間軍事会社に対して、ロシアの軍や諜報機関はどのような立場をとっていたのでしょうか。
廣瀬:国防省をはじめとした軍部との関係はものすごく悪い。実際に、今回起きたワグネルの反乱は、プリゴジン氏とショイグ国防相の確執も大きな要因であると言われています。
FSBも、ワグネルとは距離を置いています。今回、プーチン政権からワグネルの進軍を止めるようにと指示され、さまざまな場所に配置されたようです。しかし、戦闘は起きなかったようです。本音では、FSBもワグネルには関わりたくないのでしょう。
──ワグネルとそのトップのプリゴジン氏は、プーチン氏の私的部隊、といったイメージですね。言い換えれば、プーチン氏の独裁的な権力を支える一翼を担っているということでしょうか。
廣瀬:だからこそ、この先プーチン氏がプリゴジン氏やワグネルをどう扱うのか、現状ではあまり断定的なことは言えません。