(英エコノミスト誌 2023年6月17日号)

中国共産党は5000年の歴史を持ち出す以外、正当性を主張できる根拠がなくなっているようだ

中国共産党は正統性のワナに陥っている。

 中国共産党と中国国民を結びつける絆について、外国では何十年も前からシンプルなストーリーが語られてきた。

 統治者と被統治者の取引を、いささか見下した調子で描写したストーリーだ。

 これによると、一般庶民から都市在住の中産階級に至るまで、ほとんどの中国国民は政治について語ったり考えたりするのは避けるべきだと心得ている。

 そして権力の世界に踏み込まない見返りとして、中国の台頭でもたらされる富や機会の分け前を求めて競い合うことが許されている。

 それが最近、経済成長が鈍化し、住宅価格が下落し、大学新卒者の就職機会が激減していることから、同じ外国人が中国国民は共産党に反旗を翻すのではないかと考えるようになった。

共産党を支えたパフォーマンス正統性

 実を言うと、中国の社会協約を経済面に的を絞って論じた上記のストーリーは、共産党の野心を過小評価している。

 習近平氏が最高指導者に就いた11年前からについて言えば、間違いなくそうだ。

 習氏はしばらく前から、物質的な豊かさの追求を国是とする姿勢を弱め、厳しい監視を伴うトップダウン式のものとはいえ、政治を再び日常生活の中心に据えている。

 少なくともこれまでのところは、かなりの成功を収めている。

 驚くほど多くの市民――特に、1990年以降に生まれ、国富と国力が伸びていく様子しか知らない世代――が、総じて言えば中国は容赦なく厳しい一党支配の政治システムを取っているからこそ成功していると考えるようになっている。

 選挙の洗礼を受けていない政権や独裁国家の政権が、自分たちは優れた統治を効率的に行っているから国を支配するのが当然なのだと言うとき、政治学者は「パフォーマンス正統性」に訴えていると表現する。

 その意味では、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの最初の2年間は、共産党のイデオローグたちにとって特別なプレゼントだった。