ロシア軍の前線に迫撃砲を撃ち込み耳を押さえるウクライナ兵(5月29日バフムト近郊で、写真:AP/アフロ)

 ウクライナ軍による反転攻勢が始まったと見られる。

 今後ウクライナ軍がどのように軍事作戦を展開していくのか、その計画は決してロシア側に漏れてはならない重要な機密事項である。

 その具体的計画は、第三者に容易に分かるものではないし、むしろ分からないようにすべきであろう。 

 それを前提としつつも、今後日本などの国々が、様々な側面からウクライナを有効に支援していく上では、その時々の事態推移を正しく分析することが必要となる。

 そしてそのためには、軍事的知見による分析が不可欠である。

 そこで本稿においては、今後のウクライナ軍の手の内を予測するのではなく、現在のウクライナ軍とロシア軍の対峙状況をどう理解すればよいのか、軍事的原則に沿って考えていくこととしたい。

ウクライナ軍とロシア軍の全般態勢

 現在の状況を正しく評価するためには、現状においてロシア軍が守勢にあり、ウクライナ軍は攻勢にあるという基本認識が重要である。

 ロシア軍はこの冬以来、特にドネツク州全域の占領を目的に攻勢を続けてきたが、バフムトという一つの街の奪取に半年以上かかったことに象徴されるように、ほとんど占領地域を拡大することができなかった。

 その一方、欧米諸国からの装備品や訓練の支援を受けたウクライナ軍は、春以降反転攻勢に出るのではないかと見られてきた。

 そこでロシア軍は第一線地域において、地雷原などの対戦車障害帯を構成し、その後方に塹壕を掘って射撃陣地を構えるなど、防御の態勢を固めてきたのである。
 
 その守るべき正面は、総延長1500キロにも上る広大な地域である。

 この広正面での作戦全般を考えると、攻める側は自分が選んだ地域に主動的に戦力を集中させることができるが、守る側はどこを攻められるかが分からないので、全域に戦力を張り付けておかなくてはならない。

 ウクライナ軍としては、主となる攻撃軸を定めた上で、そこに戦力を集中して防御陣地の突破を図ることが有利である。

 しかし、その正面をロシア側に悟られてしまっては、防御部隊もそこに集中されてしまう。

 そこで、他の攻撃軸でも一定の攻撃を行って、どこが主なのかを秘匿し、ロシア側の戦力分散を図ることも重要となる。