(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年5月19日付)

金には古代より人を惹きつける魅力がある

 米国政府のデフォルト(債務不履行)から投資家が身を守るにはどうすればよいのか――。

 昔なら、これはバカげた問いかけだった。だが、今日の米国政治では、この突飛な発想がほぼ正常なものとなっている。

 また、ジョー・バイデン大統領とケビン・マッカーシー連邦議会下院議長はともに、連邦政府の債務上限を現行の31兆ドルから引き上げることで合意したい――そうすることで、噂されるデフォルトを回避したい――考えを示唆しているものの、交渉を膠着させる重要なポイントがまだ残っている。

 このためウォール街のアナリストたちは今、この新たなテールリスクと奮闘し、身を守るために取り得る選択肢を密かに検討している。

 米JPモルガンなどに籍を置く一部のアナリストは「分散投資が最良の防御法」だと考え、「日本円やスイスフラン、金(ゴールド)といった通貨や貴金属、そして質の高い外国株を検討する」よう投資家に促している。

 理にかなったアドバイスに思える。

分散投資で断トツの人気

 しかし、もっと的を絞り込むアナリストもいる。

 RBCキャピタル・マーケッツは先日、デフォルト懸念に起因する「市場資金の流れに耐えられる数少ない候補の一つが金のように見える」と表明した。

 ブルームバーグが5月半ばに実施した調査でも同じ結果が出た。

 最も安全な資産は何かという問いにプロの投資家の52%、個人投資家の46%が同じ理由で金を選び、断トツの1位だった。

 第2位は米国債で、プロの投資家の14%、個人投資家の15%がそれぞれ選択した(直感に反するように思えるが、デフォルトになれば米国が景気後退に陥ることを考えれば、うなずける)。

 米国債に大きく水をあけられた第3位にビットコインが入り、米ドル、日本円、スイスフランがこれに続いた。