般若心経は「色は空にほかならず、空は色に異ならず、色はすなわち空で、空はすなわち色である」と示す。写真は「隅寺心経」伝、空海筆、奈良時代・8世紀(東京国立博物館蔵)

 人は己の成功を望むものだが、実現させるのは容易ではない。

 周囲を見回してみると、人生を決定するのは地道な努力だけではないことが見えてくる。

 真面目に一生懸命やっているのに結果が出ないのは、なぜなのか。

 私たちは、自分の思考や行動、喜怒哀楽といった感情は自身の心の動きとして自覚できるものである。

 意識とは心が知覚している状態を指す。意識には私たちが意識している部分と意識していない部分がある。

 意識できる領域を顕在意識といい、意識していない、もしくは意識できない領域を無意識または、潜在意識という。

 顕在意識と潜在意識は海に浮かんだ氷山に例えられる。

 水面から上の部分が顕在意識、潜在意識は水面の下の部分とされ、その割合は顕在意識が4%、潜在意識が96%といわれる。

 善悪の判断や悩んだり不安になったりするのは、顕在意識の働きによるものだ。

 潜在意識とは自分では自覚もコントロールもできない領域で、それは心的エネルギーでもあり、人の過去の体験や知識、思考、感じた印象や忘れてしまった記憶も記録されている知識の貯蔵庫といわれる。

 人間の行動の多くは潜在意識によるものとされ、もし潜在意識を最大限に活用できれば、人は思い通りの人生を歩めるという考え方がある。

 深い意識層に自分が望みを放り込むことができれば、それは未来に実現するというものだが、そうした考えは宗教、哲学、心理学を問わず古今東西に存在する。

 頭に思ったことを潜在意識の中に入れることが、「因」とするならば、将来の体験は「果」で結果となる。

 この「因」と「果」の2つを結ぶものを、仏教では「因果」という。