(英エコノミスト誌 2023年5月13日号)
中国の歴史的な上昇が水平飛行に転じつつある。そのせいで危険性がさらに高まるとは限らない。
中国の台頭は過去40年間の世界を特徴付ける現象だった。
経済の改革・開放が始まった1978年以降、この国の国内総生産(GDP)は平均で年率9%という目もくらむような高成長を遂げてきた。
おかげで8億人もの市民が貧困から抜け出すことができた。
現在、中国は世界全体のGDPのほぼ2割を占める。その市場と製造業の基盤はとてつもなく大きく、世界経済を再編するほどだった。
中国を支配し始めて10年になる習近平国家主席は、自国の重要性の高まりを利用して地政学的な秩序も再編したいと考えている。
40年間の急速な台頭に陰り
ただ、そこには一つだけ罠がある。中国の急速な台頭に陰りが見えるのだ。
習氏は今後数十年間で中国の「偉大なる復興」を成し遂げると約束しているが、足元の中国経済の状況はそれに比べると平凡で、「偉大なる成熟」と呼べそうだ。
10年前には、中国のGDPは21世紀半ばに米国のそれを(市場レートベースで)抜き去り、その後は圧倒的なリードを維持すると予想されていた。
しかし今では、そこまで劇的な変化には至らず、両国の経済規模は同等に近いものになるのではないかと見込まれている。
このような経済成長軌道の変化をめぐり、中国ウォッチャーの間で激しい論争が巻き起こっている。
そこでは中国の影響力と、米国とのライバル関係が再度考察されている。
例えば、中国の国力は今後、ライバルの国々との比較で低下していき、逆説的だがそのせいでより危険な存在になるとの見方がある。