一方、教主が性的暴行犯として逮捕されて収監生活を繰り返している中でも、摂理はむしろ組織を拡大させ、現在は日本、台湾、香港、米国など40カ国余りの3万人の信者を擁する教団になっているという。被害者たちは、鄭明析が本当のメシアかもしれないからと訴えるのをためらっているというから、人間を洗脳させるカルト宗教の弊害は実に恐ろしい。

失恋して統一教会を脱退

 ところで、このカルト宗教の誕生には統一教会が深く関わっている。

 2022年7月、摂理を脱退する記者会見を開いたキム・ギョンチョン牧師は記者会見文で、摂理教主の相次ぐ性犯罪の背景を次のように暴露した。

「鄭明析の絶え間ない性犯罪行為は、彼が主張する教理のためです。摂理の教理はほとんど統一教会の『原理講論』から来ています。特に創世記編に出てくる〈善悪を知る木の果〉を女性の性器と解釈し、アダムとエバが善悪を知る木の果を取って食べたことを〈セックスした〉と解釈する〈堕落論〉が同じです。

 鄭明析の“三時代論”によると、旧約は主従時代、新約は父子時代、今は成約で新郎新婦の時代だそうです。最初のアダムは未成熟のままエバとセックスをして堕落し、2番目のアダムであるイエスは肉体が死んでしまって(性的に堕落した人類の)救いを成し遂げられなかったので、鄭明析が3番目のアダムとなり新郎として来たと主張します。

 だから、新郎になった鄭明析を肉体的に愛することが神様を愛することだと言い、性犯罪を神様の愛だと美化しています。だから、女性たちは、性暴力を受けたにもかかわらず、神様から愛されたものだと錯覚させられます。その教理に惑わされた数百人の女性たちが自ら結婚をあきらめ、北朝鮮の『喜び組』のように生きています。彼女らには治療が必要であり、実際的な救助が必要です」

 カルト宗教研究家である故タク・ミョンファン牧師が月刊『現代宗教』99年8月号に寄稿した「JMSの歴史と実体」によれば、1945年生まれの鄭明析は30歳の1975年に統一教会に入教して1978年までの3年間、統一教会で「反共講師」として活動した。鄭はその当時、好意を寄せていた女性について統一教会に入教したのだが、彼女に失恋すると1978年に統一教会を脱退。側近たちに「文鮮明の使命は75年で終わり、78年からは私の使命が始まった」と公言していたという。