(北村 淳:軍事社会学者)
4月6日に陸上自衛隊のヘリコプターが墜落した前後から、空母戦闘艦隊を含む中国海洋戦力(各種水上戦闘艦艇、ミサイル爆撃機、戦闘攻撃機、中国本土沿岸地域には地上ミサイル部隊、それにおそらく潜水艦戦隊)は、台湾を封鎖する態勢を速やかに確立し維持するための大規模軍事演習実施態勢に入った。
この軍事演習の中心的シナリオである海洋封鎖演習ならびに航空攻撃演習は4月8日から10日にかけて実施されたが、本稿執筆中の11日現在でも台湾包囲態勢は継続されている模様であり、米海軍対中強硬派などは危惧の念をつのらせている。
なぜならば、中国軍による台湾攻撃は「海洋封鎖 → 短期激烈戦争前半(ミサイル飽和攻撃)→ 短期激烈戦争後半(航空攻撃) → 近接航空戦力と先鋒上陸侵攻部隊による残敵掃討戦 → 大規模占領部隊の上陸」という流れで実施されると考えられるため、まさに海洋封鎖と航空攻撃の演習は台湾侵攻演習そのものといえるからである。
時代遅れになった米軍の伝統的戦術
かつて(といってもごく最近まで)アメリカは中国が大規模軍事演習を実施する際には、空母打撃群を台湾近海域に向けて出動させ中国を威嚇するのを常としていたものである。だが、今回の中国軍による台湾威圧軍事演習に際しては、アメリカ海洋戦力は鳴りを潜めていた。というよりは、動くことができなかった。