また少子化対策のひとつの目的が人口の維持にあるとするのなら、自然増(出生数-亡くなった人の数)ばかりでなく、国際的な「社会増(転入-転出)」も考えなければいけないでしょう。つまり外国人の受け入れです。
日本は、移民受け入れ、難民受け入れに消極的な姿勢を通してきましたが、人口維持のためにはそのタブーを破る必要があるのではないでしょうか。
とにかく政策総動員で当たらないと、日本自体が消滅してしまいかねないという危機感を持つことが必要なのです。
テクニカル・アプローチとアダプティブ・アプローチ
いまざっとあげたアプローチは、子どもを増やすことに焦点を当てた「テクニカル」なアプローチと言えます。私はこれとは別に、もう少し高い視点から見た「アダプティブ」なアプローチも必要だと思うのです。
たとえ話ですが、心臓病の人に心臓病の薬を差し出すのがテクニカル・アプローチ(技術的対応)。それに対し、心臓病の薬を渡すだけでなく、その人の普段の生活習慣や食習慣にも目を配り、根本から病気を治していこうというのが「アダプティブ・アプローチ」(適応的対応)になります。この視点は、岸田首相の「異次元の少子化対策」には含まれていませんが、過去に失敗を重ねてきた少子化対策を実効的なものにするためには、アダプティブ・アプローチは絶対的に必要になると思うのです。
その中で私が特に大切だと考えるポイントは次の3点です。
ひとつは、住居環境の改善です。物理的に狭い家に住んでいると、「家族を増やす」ということが躊躇われるようになります。事実、都市部の出生率が地方に比べて低いのは、この住環境の貧しさに原因があります。
高度成長期の都会には、「1Kの住まいに夫婦2人と子ども3人」という家族も珍しくありませんでしたが、現代では例えば「子どもは3人は欲しい」と思うならば、ある程度の広さをもった住まいが必要と考えるでしょう。しかし都会ではなかなか難しい問題です。
これを解消する方法は、人口の都市部への偏在を解消し、分散型国家になることです。いま政府はスタートアップ育成に力を入れると言っていますが、これも都市部だけではなく、地方でもスタートアップを育てる必要があります。地方創生にも関連してきますが、少子化対策の観点からも、「どう一極集中を分散させるか」をベースにして政策を考えていく必要があるのです。