この当時、自然出産がまだ可能な40代前半の女性というのは、ちょうど「団塊ジュニア」と呼ばれる人々でした。実は私もその世代です。同級生の数は210万人ほどいる人口のボリュームゾーンです。
そのボリュームゾーンの女性がちょうどこのころ、「子どもを産む最後のチャンスだ」と駆け込み的に出産していったので、出生率、出生数ともに上昇したのです。私はその動きを分かっていたので、「何かしら対策を打たないと、これから数字はまたズルズル落ちていく」と予想していました。
実際、2015年を境に、出生数も出生率もどんどん落ちはじめました。
2015年に100万5721人だった出生数は、翌2016年には100万人割れ。そこからわずか3年後の2019年には90万人割れ。さらに3年後の2022年には80万人も割ってしまったのです。こう書くと、いかに少子化のペースが速まっているか分かっていただけるのではないでしょうか。
あまり期待されていない「異次元の少子化対策」
ここで抜本的な対策を打たないと、本当に日本という社会が消滅してしまいます。

折しも、4月から「こども家庭庁」が発足したため、こども家庭庁に少子化対策の枠割を期待する向きもあるようですが、この新しい役所は、少子化対策というよりは、子ども政策を一元化して、子どもや子どもを育てる親に寄り添うという趣旨で設立されています。ですから少子化対策に無関係とは言わないまでも、子どもを増やすことそのものがど真ん中の目的ではありません。
そうなるとやはり期待するのは、岸田文雄首相が表明している「異次元の少子化対策」ということになりそうです。いまのところ浮上してきているメニューは、児童手当の拡充や男女ともに育休をとりやすくすること、教育費の負担軽減などです。正直に言えば、これで出生数がぐんぐん上昇するとは思えません。
世間も「異次元の少子化対策」には冷ややかな視線を向けているようです。朝日新聞が4月8、9日に実施した世論調査では、岸田内閣の少子化対策に「期待できる」としたのは33%で、「期待できない」は61%に上っています。
やはり、国民に「子どもを作ってもらう」「子どもを産んでもらう」という行動をとってもらうようにするには、生半可な対策では不可能なのでしょう。