出版社の編集長にして、裏社会の取材で名を馳せる作家・草下シンヤ氏。『裏のハローワーク』や『闇稼業人』、小説『半グレ』など、ヒット作は枚挙に暇がない。同時に、扱っている分野が分野だけにトラブルも多く、半グレに拉致されかけるなど、怒られ体験も豊富だ。そんな草下氏が数々のトラブルの中で身につけた、怒られの作法──。
(*)本稿は『怒られの作法 日本一トラブルに巻き込まれる編集者の人間関係術』(筑摩書房)の一部を抜粋・再編集したものです。
中傷コメントの原因は、自分ではなく相手にある
炎上に加担する人の多くは、事実関係を確認せず快・不快という感情だけでコメントしている。そして建設的な批判(問題の改善)ではなく、相手の評価や信頼を落としてマウントを取る、あるいは自己承認欲求を満たすことが目的化しています。
現在、私のツイッターには10万人以上のフォロワーがいますが、やはり何人かアンチはいて、時折言いがかりや誹謗中傷のコメントが送られてきます。
私は、自分の信頼を棄損するようなデマや関係者を攻撃するようなコメントを除いて、基本的にアンチには反応しません。戦う意味がなく時間の無駄だからです。見ず知らずの人間に、大切な時間や感情のリソースを割くのはもったいないし、醜い言葉で応酬しても気分を害するだけです。
また、悪意のある人に反応をすることで、その人に注目が集まってしまいます。その人物は意気揚々とアンチ活動を続けていくでしょう。相手にすることでその人物に栄養を与え、いくらかでもパワーアップさせてしまうのです。目に余る場合は、粛々とミュートして、その人物に注目が集まらないようにやり過ごします。
ほとんどの場合戦う意味がないと感じるのは、人格攻撃や誹謗中傷の原因が、自分ではなく相手の中にあると思うからです。