中国は和平を訴えるが・・・(写真は北京の紫禁城)

 中国の外交部は2月24日、停戦や和平交渉の再開など12項目からなる「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」と題する文書を公開した(12項目の詳細は後述する)。

 外交部は同日の記者会見で、「中国はウクライナ問題について、終始、客観的で公正な立場を取り、積極的に和平を促し対話を促進し、危機の解決のために建設的な役割を果たしてきた」との認識を示した。

 そして、同文書に基づいて、引き続き国際社会とともにウクライナ危機の政治的解決のために貢献するとした。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、2月24日、中国が同文書を発表したことに対し、「戦争の当事国だけが和平案を提案できる」と慎重な立場を示した。

 一方で、習近平国家主席と会談する用意があると明らかにした。

 また、ゼレンスキー氏は12項目の中に「いくつか同意できない項目がある」と述べ、ウクライナの領土保全やロシア軍のウクライナからの撤退などが明記されていないことに不満をにじませた。

 ウクライナは、ロシア軍の完全撤退や全領土の返還などを求める「10項目の和平案」を既に公表している。

(詳細は、拙稿「国土割譲もやむなし、ウクライナに必要な早期和平協定」(2022.12.2)を参照されたい)

 ジョー・バイデン米大統領は2月24日、同文書について、「ロシア以外の誰も利することはない」と否定的な見解を示した。

 北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は2月24日、訪問先のエストニア・タリンで記者会見した。

 同文書について「中国は違法なウクライナ侵攻を非難できないので、あまり信用されていない」と述べ、ロシア寄りとされる中国は仲介役として信用できないとの見方を示した。

 アントニー・ブリンケン米国務長官は2月24日、「中国は中立的な立場で平和を追求していると見せかけ、ロシアの誤った言説を広めている」と指摘した。

 また、12項目に「主権の尊重」が入っていることに触れ、「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナの主権を無視していることが問題の核心だ」と批判した。

 さて、中国政府は、平和的解決に向けた積極的な姿勢をアピールしたが、対話や和平の実現のために中国政府がどのように行動するかは示していない。

 今、習近平氏のロシア訪問が取り沙汰されている。

 現時点で習近平氏の訪露計画は、日程は確定しないものの、4月もしくは、ロシアが第2次世界大戦で対ナチスドイツに勝利した戦勝記念日に近い5月初旬頃になる可能性があるという。

 報道によると、習近平氏は首脳会談でロシアが侵攻を続けるウクライナを巡る多国間の和平交渉を後押しし、核兵器使用に反対する考えを改めて示す可能性があるという。

 筆者は、中国がロシア・ウクライナ戦争の和平交渉を仲介しても停戦も講和も難しいと思うが、習近平氏がプーチン氏に核兵器使用に反対する旨を直接伝え、プーチン氏が核の使用を放棄すれば、習近平氏のロシア訪問は大成功であると考える。

 さて、本稿では、習近平氏のロシア訪問に際して、これまでの中露関係や中国のロシア・ウクライナ戦争の対応などを取り纏めた。

 初めに、中露首脳等会議における首脳などの発言について述べ、次に中国のロシアのウクライナ侵略への対応と中露関係について述べる。

 最後に、最近中国が発表した「グローバル安全保障イニシアティブ(GSI)」と12項目和平案について述べる。