(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)
厚生労働省が発表した2022年の人口動態統計で、年間の死亡数は前年に比べて約13万人増の158.2万人となり、過去最多を記録した。特に12月の死亡数が15.8万人と、コロナ2019の流行が始まってから最大だった。
コロナの流行が終わって5類に移行することが決まってからも、すべての原因による超過死亡は増え続けているが、厚労省はなぜ増えたのか説明できない。これに対して「ワクチン接種が原因だ」という批判が高まっているが、それは本当だろうか。
なぜ2022年にコロナ感染は15倍になったのか
まずデータをみてみよう。次の図は人口動態速報で、2020年から2022年までの死亡数を月ごとにみたものである。2020年の死亡数は前年より減ったが、2021年は増え、2年間を通算すると平年並みだった。ところが昨年(2022年)は、2021年を13万人も上回ったのだ。
このうち超過死亡数は約10万人と推定され、2021年の5万人から倍増した。超過死亡は通常、インフルエンザなどの感染症の死者を示すものだが、昨年はインフルの流行がほとんどなかったので、コロナ以外の原因は考えられない。
しかし昨年のコロナ死者は約4万人。超過死亡との差は6万人である。このようにコロナ死者数と超過死亡数に大きな差のある国は珍しい。ほとんどの先進国では、超過死亡数の7~8割がコロナ死者数である。
この原因として、厚生労働省は「オミクロン株で患者が急増し、医療が逼迫した」と説明しているが、これは誤りである。病床使用率は最大でも50%程度、人工呼吸の実施率は10%に満たない。緊急搬送の数は増えたが、死亡率は5%以下だった。コロナを5類感染症に落としたことでも明らかなようにコロナ肺炎は激減し、コロナ病床はがらがらなのだ。
ではなぜコロナ肺炎が減った昨年、超過死亡数が大幅に増えたのか。昨年の最大の死因は老衰(死因不明)、その次が循環器系疾患(心不全など)で、そのピークはコロナ死とほぼ一致している。
つまり基礎疾患をもつ高齢者の容態が、コロナ感染をきっかけに悪化した間接的なコロナ死と考えることもできる。コロナ感染から死亡までは20日~30日かかるので、死亡したときは陰性だった人も多いだろう。老衰だと検査しない場合も多いと思われる。