被害者参加人として、これらの映像を法廷で見た娘の亜季さんは語ります。
「トラックが激しい衝突音とともに、両親の車に衝突するその瞬間を見たときは、心臓が握りつぶされるような感覚になりました。今も、思い出すだけで息苦しくなります。でも、これを見て改めて、両親には全く落ち度のない事故であったことを確認できました。それだけに、裁判が始まって突然、自己保身の荒唐無稽な主張をはじめ、謝罪もまともにしない被告には失望と怒りを覚えました」
事故直後「眠たくて記憶がない」と述べていたのに……
実は、岩瀬被告は事故直後の取り調べで、事故現場から約10km手前の道の駅を通過してから眠気を催していたことを認め、『この辺から眠たくて記憶がないです』と、詳細に供述していました。
また、調書には『居眠り』に関連し、事故の9カ月前にも蛇行運転をし、一般の目撃者から会社にクレームが入っていたこと、その後も「何度か運転中に眠気を催すことがあった」といった記載もあったのです。
「それなのに被告は、ドライブレコーダーの映像を見た後に行われた検察官や裁判官の尋問に対し、『車線をはみ出した記憶はない』『居眠りはしていない』『事故の理由はわからない』『警察で言っていないことを調書に書かれた』などと、居眠り運転を全面的に否定してきました。こんな理不尽が通るのでしょうか」(亜季さん)
本件で被害者参加弁護人を務めるベリーベスト法律事務所の伊藤雄亮弁護士もこう語ります。
「被告のトラックが蛇行を繰り返し、センターラインをオーバーして衝突したことはドライブレコーダーにもしっかり記録されており、争いのない事実です。被告本人もそれについては認めています。ところが、事故後、あれほど具体的に『居眠り運転』をしていたと供述していたのに、公判で突然、『記憶がないので分かりません』と主張してきました。たしかに、『居眠り』と『わき見』では罪の重さが異なってくる可能性がありますが、私自身弁護士の一人として、被告のこの争い方は理解できませんでした。これはあくまでも推測ですが、立証責任は検察側にあるので、被告はそこを狙っているのかもしれません」