鈴鹿サーキットで開催されたスーパー耐久シリーズ戦で展示された、トヨタの各種燃料電池車(筆者撮影)

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

「燃料電池車」(FCV:Fuel Cell Vehicle)に未来はあるのか? 未来があるとすれば一体どのように普及していくのだろうか。

 燃料電池車とは、水素を燃料として、燃料電池スタック内で水素と酸素を融合することで発電し、その電力でモーターを駆動して走る電気自動車だ。一部のメーカーは「燃料電池電気自動車」(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)と呼称する。

 水だけを排出する電動車であるため、2010年代には「究極のエコカー」ともてはやされた。だが、その後、ホンダの量産車「CLARITY FUEL CELL」がモデル廃止となり、日産は燃料電池車の研究開発の進捗について公表しなくなった。海外メーカーの一部も量産開発を進めているものの、2023年2月時点で日本で購入できる乗用の燃料電池車はトヨタ「MIRAI」と韓国ヒョンデ「NEXO」の2モデルだけという状況だ。

 そのため、燃料電池車の国内保有台数も少ない。一般社団法人「次世代自動車振興センター」の調べでは、2021年度の日本国内での燃料電池車(乗用車)の保有台数は6981台にとどまる。EV(乗用車・軽EV除く)の13万8325台、プラグインハイブリッド車(乗用車)の17万4231台、そしてハイブリッド車(乗用車)1063万750台や軽のハイブリッド車232万2201台と比べると、燃料電池車の数が圧倒的に少ないことがわかる。

 政府が2010年に示した「次世代自動車戦略2010」では、2020年時点の燃料電池車普及台数として乗用車市場で最大1%程度という目標を立てていた。2020年の乗用車市場規模は約380万台なので、1%は3万8000台である。だが2021年度の実績は、その5分の1にも達していない。