昨年から全国各地で相次いでいる一連の強盗事件と同一グループによると見られている狛江市の強盗殺人事件で、「ルフィ」と名乗って計画や実行を指示していたとみられる男が、フィリピンの首都マニラで拘束されている。
警視庁がこの男ら4人について、過去の特殊詐欺事件に絡む容疑で逮捕状を取得し、この4人の身柄を早期に引き渡すよう、以前からフィリピン当局に要請を続けていた。
フィリピン側は同国内の別の事件に男らが関わっていた疑いがあるとして要請に応じてこなかったが、日本で発生した一連の強盗事件への関与が疑われたことを受け、身柄を引き渡す意向を示していると報道されている。
さて、日本国内で犯罪を行い、国外に逃亡している者およびその恐れのある者(以下「国外逃亡被疑者等」という)の数は、依然として多い。
被疑者が国外に逃亡することにより、外国捜査機関との捜査協力が必要となる場合も多く、警察は犯罪者の「逃げ得」を許さないための取組みを行っている。
被疑者が国外に逃亡する恐れがある場合には、入国管理局に手配するなどして出国前の検挙に努めている。
一方で、被疑者が国外に逃亡した場合には、外交ルートや国際刑事警察機構(ICPO-Interpol)ルートにおける関係国の捜査機関等との捜査協力や「刑事共助条約」に基づく捜査共助の実施を通じ、被疑者の人定や所在の確認などを行っている。
その上で、我が国が「犯罪引渡条約」を締結している外国からは、同条約に基づいて被疑者の引渡しを受けたり、被疑者が逃亡先国で退去強制処分に付された場合には、その被疑者の身柄を公海上の航空機内で引き取ったりするなどして検挙を行っている。
我が国が「犯罪引渡条約」を締結していない外国に対して、犯罪人の引渡しを求める場合の要件および手続は、相手国の国内法令に従うことになる。
その場合は、外交ルートによって相手国に犯罪人の引渡しを要請する。
これには検察庁が依頼する場合と警察などが依頼する場合とがあり,いずれも外務省(現地大使館)を経由して引渡請求が相手国に伝えられる。
前述したフィリピンの件がこれに該当する。
また、我が国が「犯罪引渡条約」を締結しておらず、相手国が任意の引渡しを拒否した場合、日本への引渡しではなく、その国の法律で刑事責任を追及する「代理処罰」を要請することになる。
ところで、日本が「犯罪引渡条約」を締結しているのは米国と韓国2か国のみである。
これは、先進国として、極端に少ない数である。どうしてこんなに少ないのであろうか。
以下、初めに「犯罪引渡条約」と「逃亡犯罪人引渡法」について述べ、次に「刑事共助条約」について述べ、最後に、日本が「犯罪引渡条約」を締結している国が少ない理由について述べる。