観衆の前でピアノを弾くラフマニノフ(写真:Heritage Image/アフロ)

(林田 直樹:音楽ジャーナリスト・評論家)

 今年が生誕150周年ということもあり、20世紀前半に活躍したロシア出身の作曲家セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)が、改めてクローズアップされている。

 国内のほとんどのプロ・オーケストラは今年こぞってラフマニノフの作品を取り上げるし、ピアノを中心に関連コンサートも多い。もしロシアがウクライナに侵攻していなかったら、きっとロシアからも大挙して演奏家たちが来日して、ラフマニノフ・フェスティバルのような様相を呈していただろう。

 ラフマニノフの人気は今に始まったことではない。

「のだめカンタービレ」をはじめとする少女漫画や、「蜜蜂と遠雷」などの音楽小説でも、 ラフマニノフの作品はしばしば重要な題材として扱われてきた。最近の若手ピアニストたちにとっては、リストやショパンと同様、ラフマニノフの作品は避けて通ることのできないスタンダードになっている。

 とりわけ「ピアノ協奏曲第2番ハ短調」の人気は圧倒的で、英国の放送局「クラシックFM」が毎年リスナーからの投票で決める“Hall of Fame”(名曲ベスト300)では、例年必ずと言っていいくらい、1位か2位のどちらかに入るほどだ。

 いまやラフマニノフが音楽史上にその名を刻む大作曲家であることを疑う人はいない。

 だが、一昔前には状況は違っていた。