3年ぶりに行動制限がない年末年始だったことや インバウンド消費が一部復活していることなどから、2023年は景気が上向くのではないかとの期待が出ている。一方、深刻な人手不足から供給が追いつかない可能性も指摘されており、日本経済は微妙な状況が続く。(加谷 珪一:経済評論家)
景気が良いからタクシーがつかまらないのか?
内閣府が2023年1月5日に発表した昨年(2022年)12月の消費動向調査によると、消費者心理を示す消費者態度指数は前月比1.7ポイントと4カ月ぶりの上昇となった。年末年始は行動制限がなかったことから、各地は多くの人手で賑わい、道路も混雑している様子だった。
昨年の年末からは、都内を中心にタクシーがつかまりにくい状況が続いている。タクシーの実車動向は、街角で景気を見定める有力指標とも言われており、一部の人はこうした状況から景気は上向きつつあると判断している。
諸外国がコロナ後に向けて動き始めたこともあり、日本においても消費者心理が改善しているのは間違いないだろう。しかしながら、タクシーがつかまりにくいことや混雑の背後には、なかなか人材が獲得できないという供給制限要因があることを忘れてはならない。日本はもともと人手不足が深刻だったが、今回のコロナ危機をきっかけに、人手不足はより本質的な問題に進化した可能性があり、今後の経済動向に大きな影響を与えることになるかもしれない。
このところ顕著となっているタクシーのつかまりにくさというのは、実は景気が拡大していることが最大の要因ではない。タクシーの供給台数が大幅に減少しており、供給が制限されている要因が大きいのだ。
一般的にタクシーの台数減少と聞くと「減車(過当競争を防ぐためあえて車両を減らすこと)」というキーワードが思い浮かぶかもしれないが、今回はそうではない。ベテランを中心に多くの運転手が職場から離れており、人員が足りないため車両があっても実働できない状況にあり、これが供給制限を引き起こしている。