経済規模が3割縮小したウクライナ。写真はゼレンスキー大統領(提供:President Of Ukraine/ZUMA Press/アフロ)

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 ウクライナのデニス・シュミハリ首相は1月6日の閣議で、ウクライナの2022年通年の実質経済成長率が30.4%減になった模様だと報告した。ロシアとの戦争で生産設備やインフラが破壊されたため、経済は2021年から35%から40%縮小すると見込まれた。その中でも、ウクライナは持ち応えているとう点をシュミハリ首相は強調したようだ。

 ウクライナの実質GDP(国内総生産)は、2022年第1四半期に前年比15.1%減、第2四半期に同37.2%減とマイナス幅が拡大した後、第3四半期は同30.8%減とマイナス幅が縮小した。通年の成長率が30.4%減だとすると、第4四半期は前年比38.5%減とマイナス幅が前期よりも拡大する。ウクライナ経済は悪化の度合いを強めたことになる。

 参考までに、ロシアによるクリミア侵攻があった2014年の実質経済成長率は10.7%減で、翌2015年は9.8%減だった。もちろん、戦時下で正確な経済統計を作成することなど不可能だが、ロシアとの戦争が主にウクライナの国土で行われていることに鑑みれば、ウクライナの経済がすさまじい縮小を余儀なくされたことは確かである。

 相対的に戦争の影響が限定的であり、比較的正常に近い経済活動が営まれているウクライナの西部(ポーランドやスロバキア、ハンガリー、ルーマニアとの国境に近い地方)でも、中銀が通貨防衛のために高金利政策(政策金利は25%、これを2024年まで維持するという時間軸も採用)を維持していることもあって、経済は厳しい状態だろう。

 頼みの綱は先進諸国からの援助である。

 欧州連合(EU)は2022年12月の首脳会議で、ウクライナに対して総額180億ユーロ(約2兆6000億円)の支援をすることで合意に達した。この支援はロシアによって破壊されたインフラの復旧などに充てられることになる。とはいえ、戦争が終わらない限り、ウクライナの経済は極めて厳しい状況が続く。