(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

半導体が支えている人類の文明

 あなたは毎日、インターネットに接続されたスマートフォンやPCを使っているだろう。そのスマートフォンやPCには、多数の半導体が搭載されている。またインターネットには、通信基地局やデータセンターの存在が必要不可欠である。その通信基地局やデータセンターは、膨大な半導体に支えられている。

 あなたの自宅やオフィスには、照明器具があり、各種の電機製品があるだろう。その動力である電気は、発電所でつくられ、変電所を介して送電されている。その発電や送電には、パワー半導体などが活躍している。

 あなたは通勤のために電車に乗ったり、出張や旅行のために飛行機に乗ったり、ATMで銀行預金からお金を引き出したりしているだろう。その電車の運行システム、飛行機の自動操縦システム、銀行の基幹システムなどは、半導体が制御している。

 このように現代は、半導体なしには、仕事もできず、文化的な生活もできない。大袈裟でなく、もはや人類の文明を半導体無しに維持することは不可能である。

 その半導体の製造が2026年に止まるかもしれない。そうなったら、「2027年までに2nmのロジック半導体を量産する」と言っているラピダスも、その(無謀な)目標は実現できない。

 本稿では、まず半導体の製造工程を簡単に振り返る。次に、ドライエッチング装置用の冷媒で世界シェア80%を独占している米3M社が2025年末までに、その製造から撤退するニュースを説明する。その上で、代替冷媒を準備できない半導体メーカーは、その工場の稼働が止まる危機に直面することを論じる。