(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
ロシアのアレクサンドル・ノバク副首相は11月29日、カザフスタンとウズベキスタンとの間で「ガス連合(gazovyy soyuz)」の設立に向けた協議を行っていると発表した。ノバク副首相やロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官などの話によれば、詳細は未定だが、ガス供給の在り方に関する協力関係の構築を模索しているようだ。
カザフスタンとウズベキスタンでも天然ガスは生産されている。また両国は、ガスが豊富なトルクメニスタンが中国に天然ガスを輸出する際に利用するパイプラインの経由地でもある。カザフスタンとウズベキスタンもこのパイプラインと接合しているが、中国へのガス輸出を優先し過ぎたため、国内はガス不足に陥っている。
一方で、世界2位のガス生産量をほこるロシアは、ウクライナ侵攻をきっかけに最大の顧客であるヨーロッパを失うことになった。つまり、ロシアでは行く先を失った天然ガスがダブついている状態である。そのためロシアには、国内でダブついた天然ガスをカザフスタンとウズベキスタンに対して輸出したいという意図があるようだ。
幸いなことに、カザフスタンとウズベキスタンは、それぞれがロシアとガスパイプラインで結ばれており、ロシアからの天然ガスの輸送コストは安価で済む。カザフスタンの場合、ロシアとの国境に近い東部に関しては、ロシアとの間でパイプラインを敷き、ロシアから天然ガスの供給を受けた方が経済合理性は高い。
加えて、ロシアには中国への天然ガスの供給ルートの多様化を図る意図があるようだ。ロシアと中国を結ぶガスパイプラインは、現在、2019年に開通した「シベリアの力(Sila Sibiri)」しかない。中央アジアと中国を結ぶガスパイプラインに接合できれば、容量の問題はあるが、代替ルートとしての活用できる可能性もあるだろう。