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(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 長野市で、「子どもの声がうるさい」というたった1軒の住民からの苦情を受けて、市が公園を廃止するというニュースが話題になっている。

 この報道に最初に接した時に、「いかにも長野らしい話だ」と思わずにはいられなかった。そこには私情もある。というのも、私自身、長野市で生まれ育っているからだ。

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 まず、話を整理する。2023年3月で廃止が決まったのは、長野市にある「青木島遊園地」。青木島というから、千曲川に犀川が合流して信濃川になる、ちょうど2つの河に挟まれた三角地帯のような場所にあることはすぐにわかった。ただ全国的にはむしろ、上杉謙信と武田信玄の合戦で有名な川中島と同じエリアといったほうが、わかりやすいかも知れない。宅地開発も時代と共に進み、この地域に高校が新設されたのも、私がまだ中学生の時だった。

 この公園は、地域住民からの要望を受けて、2004年に畑だった民有地を市が借り受けて整備したもの。ところが、開設当初から1軒の住民が苦情を寄せていた。周辺には、学童保育施設「児童センター」のほか、小学校や保育園もあって、日中は保育園児が、夕方は小学生たちが多数訪れて遊んでいたという。

 事前に公園設置の説明を受けていなかったというこの住民からは、「40~50人の子どもが一斉に遊んでいて、うるさい」「ボールが庭に飛び込み、取りに来た子どもに植え込みが踏み荒らされる」などの苦情が相次ぐ。

 市は2008~09年度に、公園の出入り口や遊具の場所を変えたり、消灯時間を早めたり、ボール遊びを禁止して対策を講じたものの、昨年3月、住民から児童センターに「子どもは5人程度に。声を出さず静かに遊ばせてほしい」と要望があった。これを受けて公園を維持、管理していた同センターでは、子どもを遊ばせることもできなくなり、地元の区長会が今年1月に廃止要望書を市に提出していた。