※画像は本文と関係ありません(wanida tubtawee/shutterstock.com)

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 11月12日の渋谷で、スタンガンで20代の女性を襲った男が確保・逮捕されたという事件があった。その模様を現場に居合わせた目撃者が映像に収めた。

 事件の1週間前、27歳の会社員が援交デリバリーの女と会い、コトを済ませたあと、金を持ち逃げされた。男はもう一度その女を呼び出したが、事件当日、渋谷に来たのは別の女だった。すこしでも金を取り戻そうとした男は、その無関係な女にスタンガンを押し当ててバッグを奪い、逃走しようとしたが通行人にとっ捕まった、というのが事件のまぬけな顛末である。

 だがこんないきさつはとりあえずどうでもいいのだ。犯人はスタンガンを護身用にもっていたと供述したが、それもどうでもいい。

 わたしが違和感を持ったのはその後のことである。

犯人を前にのんびりした警察官

 事件を目撃した通行人の男3人が犯人を20mほど追いかけ、地面に押し倒しつかまえた。映像はそこから始まっている。白シャツの一般人らしき男が犯人の首に手をまわし、腹ばいにさせて地面に組み敷いている。犯人は観念したのかおとなしい。

 そばにもう一人の白シャツの通行人と、警帽をあみだにかぶったずんぐりしたおっさん警察官が他所を見て立っている。わたしはその場面を見たとき、「この警官、なにやってんだ?」と思ったのである。「一般人に抑えつけさせたままか、おまえが犯人に手錠をかけて、かれと代わらんでいいのか」と思った。

 しかしあみだ警官はのんびりした口調で、「はい、大丈夫、立って」と犯人に声をかける。犯人は万歳をしながら立ち上がり、すぐに正座で座り直す。あみだ警官がスタンガンを手にしている。そしてどこかと連絡をとる。「スタンガンを持ってます。スタンガンをあてられたという男性も確保しています、どーぞ」。

「どーぞ」じゃねえよ。その「男性」の場合は「確保」じゃなくて「保護」だろ。