(小林偉:放送作家・大学講師)
ソロ・ツアーは一度も行わず
12月の声を聞くと、あの方の顔が浮かぶなんていうロックファンも少なくないのでは?
そうです、ジョン・レノン! 12月8日は彼の命日ですからね。
存命であれば、82歳。例えば、同じ元ビートルズのリンゴ・スターや、ハリウッドスターのアル・パチーノ、ジャズ・ピアニストのハービー・ハンコック、日本では、王貞治、浅丘ルリ子、デヴィ夫人、麻生太郎などなど、いまだ現役バリバリの方々とジョンは同い年ですから、あの悲劇さえなければ・・・と改めて溜息が出てしまいますよね。
ジョンにとって生前最後となったアルバム『ダブル・ファンタジー』がリリースされたのは、死の3週間ほど前の1980年11月17日。前作『ロックンロール』から5年9ヶ月ぶりの新譜リリースでしたし、ジョンにとって初の世界ツアーも噂されていました。
事実、『ダブル・ファンタジー』にドラマーとして参加したアンディ・ニューマークも、あるインタビューで「1981年春頃からツアーに出る予定で、私のスケジュールも押さえられていた」旨の発言をしていますので、世界規模だったかどうかはともかく、ほぼ間違いなくジョン・レノンのライヴ・ツアーは行われていたことでしょう。
そこで今回は少々マニアックながら、その「ジョン・レノン 幻のツアー」のセットリストを予想してみるという趣旨でお送りしたいと思います。
そもそもジョンは生前、ソロ・ツアーを一度も行っていません。それどころか、ビートルズ名義以外で、ライヴ演奏したことすらごくわずか。以下が全てです。
1969年9月13日、カナダ・トロントでの「ロックン・ロール・リバイバル」、同年12月15日、イギリス・ロンドン・ライシアム・ボールルームでの「ピース・フォー・クリスマス」(以上2回はプラスティック・オノ・バンド名義でのゲスト出演)。
1971年6月6日、ニューヨーク・フィルモア・イーストでのフランク・ザッパとの共演、同年12月10日、アメリカ・ミシガン州アン・アーバーでの「ジョン・シンクレア・ベネフィット・コンサート」、その1週間後の12月17日、ニューヨーク・アポロシアターでのアッティカ刑務所入所者の家族のためのチャリティ・コンサート。
1972年8月30日、ニューヨーク・マジソン・スクエア・ガーデンでの「ワン・トゥ・ワン・コンサート」(昼夜2回)、1974年11月28日、これまたニューヨーク・マジソン・スクエア・ガーデンで行われたエルトン・ジョンのライヴへの飛び入り、1975年4月18日、ニューヨーク・ホテル・ウォルドリフ・アストリアでの「サリュート・トゥ・サー・ルー・グレイド」と、観客を前にして演奏したのは、この9機会のみ。
これ以外には、テレビ・ショー出演時にスタジオ・ライヴ演奏したことが幾つかあるだけ。同時期には、かつてのバンドメイトであるポール・マッカートニーやジョージ・ハリスンがアメリカツアーを敢行していましたが、ジョンがツアーに出たことはなし。その機会が満を持して訪れるかという矢先の悲劇だったワケですね。
さて本題。「ジョン・レノン 幻のツアー」のセットリストはどんなものだったのでしょう。ファンならば妄想が膨らむところですよね。そこで、上記の数少ないライヴで演奏された曲や、ニューアルバムのプロモーションを兼ねたツアーであることなどを鑑み、筆者なりに“予想(妄想)セットリスト”を考えてみましたので、以下に発表してみたいと思います。