ロシアは10月26日、ウラジーミル・プーチン大統領の指揮で、ロシア軍の陸海空の核戦力部隊が核搭載可能なミサイルを発射する演習を実施したと発表した。
演習では、多弾頭ICBM(大陸間弾道ミサイル)「ヤルス」を極東カムチャッカ半島の標的に向け、露北部アルハンゲリスク州のプレセック宇宙基地から発射したという。
また、同じ標的に向けてSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を北極圏のバレンツ海から、巡航ミサイル(ALCM)を戦略爆撃機「Tu(ツポレフ)-95」が発射したという。
ロシア国防相はこの演習について、「敵の核攻撃に大規模な攻撃で報復する想定だった」と説明している。
また、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は10月23日、米国のロイド・オースティン国防長官との電話会談の中で、ウクライナがいわゆる「汚い爆弾(放射性物質を爆発によって拡散させる爆弾)」の使用を計画しているとして非難した。
ほかにも、フランスや英国との国防相にも同じ内容を電話した。
これに対して米政府は、ロシアによる「偽旗作戦」だとして強く反論している。
ロシアによる核兵器を想定した演習も、ウクライナが汚い爆弾を使うという発言も、米欧やウクライナが使うという「嘘」をまき散らし、実は、ロシアが使うと脅しているとみるべきだろう。
1.ICBM・SLBM発射演習とは何か
ロシアの核戦力部隊によるICBM、SLBMを発射する訓練は、今始まったものではない。
旧ソ連の時代から行っていて、ソ連邦崩壊後はしばらく実施していなかったが、プーチンが大統領になってから復活したものだ。
旧ソ連軍は、欧州方面から極東方面にわたる全軍の演習では、
①オホーツク海に展開する弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)からバレンツ海(ノバヤゼムリア)へ、②バレンツ海の同原潜からカムチャッカ半島へ、弾道ミサイル(SLBM)を発射していた。
また、③宇宙基地のプレセックからICBMをカムチャッカ半島や太平洋に撃ち込んでいた。
ロシア戦略ロケット軍の弾道ミサイル発射(演習)イメージ
(図が正しく表示されない場合にはオリジナルサイト=https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72463でお読みください)
バレンツ海には、ノバヤゼムリアという核爆破実験場があり、カムチャッカ半島にはミサイルの弾着場がある。これらを目標に射撃実験や射撃訓練を実施しているのだ。
飛翔距離はSLBMの場合は5000~6000キロ、ICBMの場合は1万キロであり、米国・欧州各国に到達できる。