英国のトラス首相は就任早々、自国の国債大暴落に見舞われた。日本も対岸の火事とは言えなくなりつつある(写真:AP/アフロ)

「国債バブル」の崩壊がささやかれ始めている。英国では新政権が打ち出した減税への不安感から国債が大暴落した。世界的にも、新型コロナウイルス感染症による社会不安を背景に資金が集中してきた国債からマネーが離れ始めている。日本もその影響からは逃れられない。戦時期と比較しても、わが国の政府債務規模が膨らんできている現実もある。政府・日銀はこれまで、日本国債市場の持続可能性を疑う投機家たちの売り仕掛けを退けてきたが、今後も勝ち続けられるとは限らない。

(平山賢一:東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト)

短期間で13%も下落した英国債

 2022年9月、英国の国債は大暴落を演じた。8月末の10年国債利回りは、2.8%だったものの、一時的に4.5%まで上昇(国債価格は下落)したのである。英国民にしてみれば、安全資産と考えられていた自国の国債価格が短期間に約13%も下落するとは思いもしなかっただろう。

 2020年まで低下基調で推移した世界中の長期国債の利回りが上昇に転じており、コロナショックなどを背景に低くなり過ぎた利回りの修正が始まっている。社会不安により安全資産とされる国債に資金が集中したために、国債価格が上昇し過ぎた「国債バブル」の崩壊が始まったとの声も聞こえてくる。

 2007年のパリバショックから始まるグローバル金融危機も、周辺市場での下落が積み重なり、小さな欠片が大きな雪崩となって大混乱をつくりだした。それだけに、英国債市場の混乱を見過ごさず、気を引き締めておくことは大切かもしれない。

 ファンドマネジャー時代の先輩が言っていた次の言葉が思い出される。

「これまで安全だと思っていたものが実は違っていたという想定外は、思いのほか大きくなるものだ」