「反面教師」は日本語としてすっかり定着していますので、ずっと昔から使われてきた言葉だと思っている人は多いでしょう。しかし、実は日本に伝わって使われるようになってから100年も経っていないのです。
恐らく、日本には「悪いお手本」という意味を一言で表す単語がなかったところ、この「反面教師」という言葉がピタリとはまったため、急速に使われるようになったのではないかと思われます。
「尊王攘夷」は中国語だった
幕末期において「天皇を中心に、外国勢力を打ち払う」という意味を持つ「尊王攘夷」思想は、日本の転換に大きな影響力を持ちました。この言葉と思想は、当時、最も先鋭的だった水戸藩の水戸学派を中心に提唱されたのですが、初めて登場したのは日本ではなく中国、それも紀元前の時代でした。
この言葉の起源となったのは、「春秋五覇」と呼ばれる春秋時代の著名な5人の支配者の1人である斉国の桓公(かんこう、前685~前643年)と、その片腕となった管仲(かんちゅう、不詳~前645年)の政治姿勢です。
当時、中国の最高権力者に当たる周朝の王室はすっかり衰え、権威も失っていました。諸侯は命令に従わなくなり、異民族も度々侵入してくるなど、さながら世紀末のような状況でした。