建物の中はベンチがあるだけで、狭いワンルームといった感じ。ベンチに座ると、正面の大きな窓の向こうに、ゆるやかに流れる只見川と対岸の深い森の緑が目に入る。
風景を切り取る「ピクチャーウィンドウ」な光景を見て、そうか、この大開口の窓を設置するためにコンクリート造りの駅舎を作ったんだなと、合点がいった。
只見線沿線は有数の積雪地帯であり、雪を落としやすくするため屋根の傾斜は大きくなっている。片流れ屋根にしたのは只見川側に大きな窓を設置するためではないだろうか。
2022年6月に訪問したときは天候に恵まれ、写真にあるようにまばゆいばかりの陽光で満ちていた。だが、実はこのあたりは「霧幻峡」と呼ばれ、川霧で有名な場所だ。対岸の集落に住む人々にとって重要な交通手段だった渡し舟は集落の廃村とともにいったんは役目を終えたが、近年になり観光用として復活。幻想的な川霧の中を手漕ぎの舟で遊覧する夢のような体験ができる場所でもある。
只見線随一の秘境、乗降客ゼロの日もある「会津水沼駅」
一般的に「秘境駅」と呼ばれる駅には、いくつかの特徴がある。無人の駅、列車運行本数が少ない、乗降者がほとんどいない、鉄道以外のアクセスが極めて悪い、などである。
只見線の中で一番の秘境駅が会津水沼駅だ。国道252号から脇道を50mほど入ったところなので、アクセスが悪いとは言い切れないが、駅への入口となる脇道の曲がり角がとにかくわかりにくいのだ。おまけに駅周辺にはほとんど民家らしきものがない。あるのは、木々とホームと線路のみ。