被害者1人の事件で加害者に死刑判決が下されることもあったが…
実は、殺害された被害者が1人でも死刑になった事件はある。
それも、山上容疑者が裁かれる裁判員制度が導入された2009年以降、被害者が1人でも一審の裁判員裁判で死刑判決が言い渡されたケースは4件ある。以下に死刑判決が出た順に列記する。
(1)【東京南青山強盗殺人事件】2009年11月16日、強盗目的で東京・南青山のマンションに入り、飲食店店長(当時74歳)の首を包丁で刺して殺害。逮捕された男は、1988年に自宅に放火するなどして妻子を死なせる事件を起こし、懲役20年の判決を受け服役。出所後わずか半年で、この事件を起こした。男は捜査段階から公判を通じて完全黙秘を貫く。2011年3月15日、死刑判決。
(2)【千葉女子大生殺害放火事件】2009年10月22日、千葉県松戸市のマンション2階の一室から出火。焼け跡からこの部屋に住む女子大生(当時21歳)が刃物で胸を刺された全裸の遺体で発見。その後、女子大生のキャッシュカードを使って現金を引き出した男が逮捕。男はこの事件と前後して、強盗致傷や窃盗、強姦未遂などを引き起こしていたことに加え、強盗と強姦の前科があった。2011年6月30日、死刑判決。
(3)【岡山元同僚殺害事件】2011年9月30日、当時27歳の派遣社員だった女性を岡山市の元勤務先の倉庫に誘い込み、性的暴行を加えて、財布を盗み、「誰にも言わんから、助けて」と懇願されながらも刺殺。遺体を大阪市に運んで刃物で解体し、川などに遺棄。強盗殺人、強盗強姦などの罪で男が逮捕起訴された。前科は無かったが、2013年2月14日、死刑判決。
(4)【神戸女児殺害事件】2014年9月11日、神戸市長田区の小学1年生の女児が行方不明となり、同月23日に雑木林から切り刻まれた遺体が発見。現場に診察券とタバコの吸い殻が落ちていたことなどから、近くに住む男を逮捕。男は女児に「絵のモデルになって欲しい」と声をかけ、自宅アパートに誘い込み、そこでビニールロープを首に巻き締め付けた上、刃渡り約15.5センチメートルの包丁で後頸部を4回以上突き刺して殺害。その腹部を切り開いて内臓を摘出し、身体を頭部、上半身、右脚と左足に切断したほか、両乳首あたりの皮膚を削ぎ落としている。これらをコンビニ袋に入れるなどして、雑木林に捨て置いた。男は心理検査の結果、知的障害と正常の境界域にあるとされたが、2016年3月1日、死刑判決。
いずれも「酷い!」と、思わず叫びたくなるような事件だった。市民感覚を反映することが裁判員制度の目的とすれば、当然の結果と頷きたくもなる。