辞意を表明したイタリアのドラギ首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 イタリアで政権崩壊のリスクが高まっている。欧州中央銀行(ECB)の前総裁であるマリオ・ドラギ首相が率いる現政権はパンデミックの最中の2021年2月、事実上の挙国一致内閣として発足した。それから1年半が経過したが、安定は長く続かず、イタリアで「慢性病」とも言える政治不安が再燃することになった。

 事の発端は、7月14日の上院で物価高騰対策などを盛り込んだ暫定措置令の採決と合わせて行われた内閣信任案を巡って、連立の一角を占める左派政党、5つ星運動が議会上院での投票を拒否したことにあった。暫定措置令自体は賛成多数で可決・成立し、また内閣も信任されたが、ドラギ首相はマッタレッラ大統領に辞意を表明した。

 もともと5つ星運動はドラギ内閣を支える一大勢力だったが、支持率の低下を受けて連立政権参加に対する党内の不安が高まった。6月には党の有力者の一人であるディマイオ外相が多数の議員とともに離党して新党「ともに未来へ」(Insieme per il Futuro)を結成したため、5つ星運動の政権での影響力は低下していた。

 今回の5つ星運動の造反劇は、党首を務めるコンテ前首相による支持率回復のためのアピールに過ぎないという見方が有力である。ドラギ首相は抗議の意味も含めて大統領に対して辞意を表明したが、大統領はそれを拒み、各政党から信任を得られることができるかを7月18日週に改めて確認するよう、首相に対して指示を出した。

議会上院での投票を拒否した5つ星運動(写真:ANSA/アフロ)