(立花 志音:在韓ライター)
「お母さん大変だよ!安倍総理が撃たれて死んじゃったんだよ!!」
安倍元総理が暗殺された日の14時過ぎ、息子から電話がかかってきた。
「なんで僕がカトク送ったのに見ないの? 早く見てよ!!」
カトクというのはカカオトークの略で韓国人のほとんどが使っているメッセンジャーである。
「うん、知ってるよ。それから死んでないから!!勝手に死んだことにしないで!!」
筆者はその時間には既に、日本に住んでいる韓国人の友達からの連絡で事件が起こったことは知っていた。
そしてその頃、韓国ではヤフーニュースの偽カウントによるデマが、韓国語に翻訳されてTwitterに出回っていた。襲撃からたった3時間で韓国ネットには、ほぼ日本と同じか、人口比で考えると日本以上かもしれない量的の情報が飛び回っていた。
特に写真や動画はどこで誰が探したんだろうというぐらい、韓国人のSNSから上がって来た。
その日、息子はいつもより早く帰ってきた。
「なんだ、泣いてるかと思って心配して来たのに。結構平気そうじゃん。じゃあ、なんか食べるものある? 食べてから塾に行くから」
日本の現職総理の名前は知らないくせに、安倍元総理が撃たれたことについては韓国の高校生も大騒ぎだったらしい。
筆者は決して平気だったわけではない。元総理の死去から1週間近くが過ぎても、心は平穏ではない。しかし、あえて言うなら「2年前に泣き終わった」というのが正直なところである。