(川島 博之:ベトナム・ビングループ、Martial Research & Management 主席経済顧問)
インドネシアで開かれたG20外相会議を前に、7月5日、ロシアのラブロフ外相がベトナムを訪問した。この訪問は、大きく変わりつつある東南アジアの地政学を象徴する出来事と言えよう。
ロシアとベトナム、ソ連時代からの深い付き合い
なぜラブロフ外相はベトナムを訪問したのであろうか。
最大の狙いは石油と天然ガスの売り込みと考えられる。現在ロシアは西側から経済制裁を受けており、EU諸国はロシアからの石油の購入を拒否している。天然ガスについても輸入を取りやめる予定だ。そんな状況下で、ロシアは新たな買い手を見つけなければならない。
では、なぜベトナムなのだろうか。その大きな要因は、ベトナムが社会主義国であり、ソ連時代から仲が良かったことである。
ただこの時期にベトナムがロシアの外相を受け入れることにはリスクがある。米国に睨まれる可能性が高いからだ。筆者は現在ハノイに滞在しているが、米国大使館員が会談の内容をつかむために奔走していたとの情報を耳にしている。