(羽田 真代:在韓ビジネスライター)
7月3日、時事通信が「韓国旅行ついに解禁…でも日本人が好きだった明洞はもうない?」という記事を出した。新型コロナウイルスが蔓延する前まで外国人観光客で賑わっていた明洞だったが、コロナ禍の2年半で空き店舗が増加して、現在は閑散としているからだ。
◎「韓国旅行ついに解禁…でも日本人が好きだった明洞はもうない?」(時事通信)
2022年1月から4月までの明洞の商店街空室率は42.1%と、ソウル市内の平均空室率の6.2%と比べて非常に高い。記事では、文在寅(ムン・ジェイン)政権の失策によって高騰した不動産価格が、明洞に空き店舗を増加させた原因の一つだという説明があった。
明洞駅から徒歩1分の距離に位置する「ネイチャーリパブリック 明洞ワールド店」という化粧品店がソウル市内で最も公示価格が高い。1平方メートル当たり1億9000万ウォン(約1980万円)、総面積が169.3平方メートルだから全体では約320億ウォンである。この店舗は、20年連続で1位の座に君臨している。
路線価日本一は銀座にある老舗文房具店「鳩居堂(きゅうきょどう)」前で、こちらは1平方メートル当たり4224万円。37年連続で全国トップだ。「明洞は韓国の銀座」と韓国では例えられることがあるが、価格だけで比較すると日本の半分以下である。
今の明洞は空き店舗だらけで人もまばらだ。時事通信社の記事でも指摘されていたが、この街は韓国人のためではなく、外国人観光客のためにつくられた街だから人気がない。新型コロナウイルスの影響によってインバウンドの需要がなくなり、街が衰退したのだ。
2019年7月からの日本製品不買運動直後まで、それこそ明洞の一等地にユニクロの大型店舗があった。ユニクロがあった時は韓国人もそれなりに明洞を訪問していたが、閉店してからというもの、この街には韓国人が魅力に感じるものが少なくなってしまった。
先ほどご紹介したネイチャーリパブリックは、韓国の至るところに店舗を構えている。その他の化粧品店や雑貨店も同じだ。明洞でなければ購入できない物などなく、自宅や職場、学校の最寄り店で事が済む。
飲食店という観点で見ても、「明洞価格」という価格があるように、そもそも高い。加えて、韓国は元々専門店中心の文化だが、明洞の飲食店は外国人ウケするものを何でも取り扱っているから質が低い。だから、韓国人は「明洞の飲食店はマズイ」と言って、特定の店舗を除く大部分の店舗には見向きもしない。