変わる日本の世論と核保有の実現性

 今後予想される台湾海峡や朝鮮半島の危機、強まる中朝露の連携と軍事的脅威などの情勢悪化に直面すれば、従来の国民の核アレルギー、反核感情に代わり、実効性ある抑止力と侵略に抵抗できる軍事力の保持を求める声が、若い世代を中心に日本国内でも高まるであろう。

 前述したように、技術的には日本は、「仮想的な」核保有国ともみられている。

 2004年当時の全米科学者連盟の見積によれば、「日本は1年以内に機能する核兵器を製造できる」とみられていた。

 現在は、核爆弾なら日本は数日で製造可能と米国の専門家はみている。

 日本は1992年からウラン濃縮工場を稼働させており、プルトニウムの再処理工場の建設は1993年から着工され2022年上期の竣工を目指しほぼ完成している。

 福島第一原子力発電所の事故後、原発の再稼働と新設については再検討されているが、日本は世界最高水準の民生用原子炉技術を持っている。

 日本の民生用の宇宙ロケットの一部は、わずかの努力で核搭載の可能な長距離弾道ミサイルになりうる。

 日本がミサイルの搭載可能な潜水艦を開発し、これらのミサイルが潜水艦から発射されるようになれば、地下の固定式サイロのミサイルよりも非脆弱な核兵器システムになるであろう。

 また日本の核物質とスーパーコンピューターに関する広範な経験と能力からみれば、日本の科学者は信頼のおける核弾頭を核実験なしでも開発できるとみられている。

 また、NECとIHIエアロスペースは、弾道ミサイル弾頭部に使用する再突入体を開発し製造する能力を持っている。

 その技術力は、誘導技術も含め「はやぶさ」などでも実証されている。

 このように、日本は能力的には十分な潜在的核抑止力を保有していると、国際社会からも高く評価されている。

 日本国内でも、反核平和・反原発運動を支えてきた非合理的でイデオロギー的な核アレルギーは世代交代とともに徐々に薄らぐであろう。

 他方で今後、中朝露など周辺国の脅威がますます厳しさを加え、かつ米国の力が後退して日本に対する核の傘や安全の保証に信頼が置けなくなれば、国内世論も政治情勢も変化する可能性は高い。

 ひとたび政治的決定さえ下されれば、技術的には数週間以内に信頼のおける核兵器を核実験なしでも製造できると、他国からもみられている。

 このような状況を総合すれば、日本はいつでも核クラブの仲間入りができる潜在能力を持つ国であり、「仮想的な」核兵器保有国ともいえよう。

 日本国民が非合理的なイデオロギー的拘束から解かれ、現実の脅威を直視し、合理的選択肢として核保有の必要性に覚醒するようになれば、独自核保有の道に踏み出し日本は最終的には最も信頼性の髙い抑止手段を手に入れることになるであろう。

 もし独自核保有に踏み切らなければ、いずれ中朝の核恫喝に屈し、日本は主権と独立を失うことになるであろう。