ウクライナ侵攻に踏み切ったプーチン大統領だが、ロシア帝国の復興からは遠ざかっているように見える。同様の目標を掲げる中国・習近平主席は何を思うのだろうか(写真:ロイター/アフロ)

(岩田 太郎:在米ジャーナリスト)

◎前編「エネルギー高・ルーブル高で荒稼ぎするプーチンロシアが抱える時限爆弾」から読む

 ロシアのウクライナ侵攻から100日以上が経過した。その侵略戦争をミクロレベルまで細かく口をはさんで戦争指導しているプーチン大統領は、その思考において、明瞭に現れたパターンがある。

 それは、「長期的なロシアの国益や繁栄」「ロシアの国力充実」という戦略上の勝利を重視するのではなく、「ロシア帝国復興の物語において象徴的な拠点の征服」「プーチン大統領自身の権威の維持」など、戦略上あまり意味のない勝利を重んじる傾向である。

 そのため、終戦後に成就させたい国際秩序の構想や、戦争で実現すべき大義そのものが存在せず、国際政治の現実と乖離した願望のみで無計画に突っ走り、貴重な人的・軍事的資源を無意味に浪費するばかりだ。

 特に開戦当初、ロシア軍は消耗戦に戦力を逐次投入する悪しきパターンに陥った。結果として兵力と装備を著しく損耗させ、戦闘能力だけでなく国力までも低下したのである。

 強大な軍事力を持ちながら、ロシアが目的達成に失敗する主因は、戦略的な勝利よりも戦術的な勝利を優先する「権威主義的なプーチン政治のあり方」であろう。それは、経済分野においても繰り返されよう。

 前回記事「エネルギー高・ルーブル高で荒稼ぎするプーチンロシアが抱える時限爆弾」で論じたように、ロシア経済は今夏から今冬にかけて顕著な悪化が見込まれる。その中で、ロシア経済がいかに市場のメカニズムを無視した統制で自縄自縛に陥っていくか、それを、旧ソ連の政治経済システムの持続性欠如や、大東亜戦争中の統制経済で失敗した日本の例を参考にしながら予測してみたい。