(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)
先日、訪韓した米国のバイデン大統領を迎えた韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、演説において、北朝鮮の非核化に向けた米韓の協力を確認した上で、「北朝鮮への融和の時代は終わった」と話した。
金大中・元大統領以降、北朝鮮との文化交流を理由に、韓国では多くの市民団体や個人が訪朝をしている。日本でも、左派思想のカメラマンや記者、一般人など訪朝した人は少なくない。
訪朝した人々は、誰もが「北朝鮮は自由の国だった。撮影時、監視はいたが自由に往来、撮影できた」と口を揃えるが、本当にそうなのだろうか。
「訪問者慣らし」とは、北朝鮮が同国を訪問する韓国人に対して行う制裁のことだ。北朝鮮国家保衛省は、通常の国家では想像もできない方法で、訪問者に対して制裁を課している。韓国の報道機関で記者を務めるイ氏(仮名)が体験した、北朝鮮の「訪問者慣らし」事例を紹介する。
イ氏が初めて北朝鮮に足を踏み入れたのは、2000年6月の南北首脳会談にさかのぼる。それ以来、韓国政府代表団の随行記者の一員として平壌を訪問した2018年9月まで、50回以上、北朝鮮を訪れたベテラン記者である。
そんなイ氏だが、最後に随行記者として訪れた際に、北朝鮮国家保衛省からとても言葉にできないような苛酷な制裁を受けた。この事実は、北朝鮮の関係者を除いては、今でもイ氏の他に誰も知らない。イ氏も口を閉ざしている。
筆者も、この件に関連した北朝鮮の消息筋から話を聞いた時には衝撃を受けた。考えただけでも、身震いするほど恐ろしかったからだ。