「古い考え方」に捉われたプーチンの敗戦

閑話休題。

 米国側はこの種の「ビジネスモデル」を精緻にリサーチ、「経済的な勝利の収め方」を余裕をもって、アナログ・シミュレーションすらしています。

 例えば、すでに3月半ばの時点で、市販の3万円のドローンを3億円のパトリオットミサイルで撃墜(https://www.cnn.co.jp/fringe/35098336.html)するという、冗談のようなことをPRして見せていました。

 先にご紹介した(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69847)黒海艦隊旗艦「モスクワ」が撃沈されたのは4月13日のことでしたが、それより1か月も前に、たった1機のドローンで、精緻なつもりのミサイル防御網も十分攪乱される現実を、自前の兵器であらかじめ示していた。

 ネットも見ない、携帯も使わないプーチンには「入っていなかった情報」でしょう。

 4月19日、岸信夫防衛大臣は防毒マスクなど共にウクライナへの民生品ドローン提供を発表(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA191O80Z10C22A4000000/)。

 これに対して野党側から「軍事転用も可能」(https://news.yahoo.co.jp/articles/e67281dffa9ff8630f4813cf1c6b4ba315f28a5d)であり、防衛装備移転三原則に抵触(https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/nsp/page1w_000097.html)と横やりを入れています。

 しかし、これは労働組合型の批判のための批判で意味をなしていません。

 ロシア側のミサイル防衛ネットワークに向けて、「完璧な民生ドローン」を100機、わらわらと飛ばしても、防衛網は混乱を極めるでしょう。

 地雷野に犬を放てば、「軍用犬投入」で「軍事転用」。トイプードルやポメラニアンなどの愛玩犬でも爆弾を括りつければ兵器になります。

(第2次世界大戦末期の日本で、実際に犬が徴用され、可愛がってくれた兵士に慣れてしまった犬が爆弾を括りつけたまま帰ってきてしまうという冗談にならない実話も、広く知られるところでしょう)

 戦場では食料だって、水だって武器になる。民生品の供与に区切りは設けられません。

 スパイとしての若き日のプーチンは、きっとそういうことに頭が回っただろうと察せられます。

 しかし御年70歳のプーチン翁は「スターリングラードの戦勝体験」に縛られた大衆イメージとともに沈没寸前の様相を呈しています。