ロシアによるウクライナ侵攻によって、国内の物価がさらに上がる可能性が高まってきた。一方で、景気が急回復する見込みは低く、賃金が上がらない中でのインフレとなる可能性が高い。継続的な物価の上昇が続いた場合、誰が最も困るのだろうか。逆に物価上昇でトクする人はいるのだろうか。(加谷 珪一:経済評論家)
すでに日本の物価も上がり始めている
2022年4月から多くの商品が一斉に値上げされたことは、ニュースなどで耳にしているだろう。今回の物価上昇は、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油価格や食料価格の高騰が原因とされている。確かにウクライナ侵攻は全世界的なインフレに拍車をかける可能性が高いが、ウクライナ侵攻による物価への影響が本格化するのは、夏以降の見込みである。つまり4月段階で起こっている物価上昇は、ウクライナ前の要因によるものであり、ここにウクライナによる物価上昇が加わると考えた方がよい。
原油価格の上昇とそれに伴う資材・食料価格の上昇は、すでに昨年(2021年)後半から顕著となっていた。ここ数年、中国や東南アジアなど新興国の生活水準が急上昇しており、全世界的に需要過多の傾向が続いている。だが、一連の需要拡大に対してエネルギーや資材、食糧の生産拡大が追い付かないことから、もともと価格は上がりやすい状態になっていた。ここにコロナ危機が発生し、全世界的に物流が混乱したことから、さらに物価が跳ね上がったという図式である。
困ったことに、日本は依然として市場にマネーをバラ撒く量的緩和策を継続しており、貨幣的にも物価が上がりやすい条件が揃っている。日本は不景気が続き、賃金が著しく低く推移してきたことから、物価はなかなか上がらなかった。だが、物価が上がらなかったのは、国民生活が苦く、企業が価格を引き上げられなかっただけの話であり、あえて商品を安く売っていたわけではない。
こうした状況にウクライナ問題が加わった形なので、日本でも、従来の予想を超えるペースで物価が上がる可能性はそれなりに高いと見てよいだろう。