6年前、サッカー界の最高峰リーグ・プレミアリーグ制覇を、優勝オッズ5001倍と言われたチームが成し遂げる。その中心選手として活躍した岡崎慎司は、この経験で得たものをこう振り返った。
「自分のためにやるからこそ人のために走れる。『人のためにやっていたらできないこと』なんだなって、あれで理解できた」
スペインリーグ2部のカルタヘナで高みを目指す今、そうした感覚を若い選手たちに、もっと早い段階で伝えることができれば、日本のサッカーがより世界に認められるのでは、と考えた。
例えば、海外で活躍する攻撃的な選手が、チームのためではなく、自分が結果を出すことを第一にプレーすること。エゴイスティックに見えるかもしれないが、結果を出せば使われ続ける。
一方で、チームのためにプレーしている選手は、ちょっとしたミスが大きな減点とみなされてしまう。
12年間、ドイツ、イギリス、スペインでプレーをし続け、何度も目にし、痛感してきたその現実がある中で、育成段階から「自分のためにプレーする感覚」を指導することはできないか。
そんな思いから、「Dialogue w/ (ダイアローグウィズ)~世界への挑戦状」というコンテンツ企画をスタートさせた。
「自分の中では、(そういう育成方法も)ひとつのやり方だな、と思う。でも、日本には日本の育成があるし、僕自身そこで働く現場の人たちへのリスペクトもあります。
自分の感覚が正しいのか。育成に限った話じゃなくて、僕が海外で見て、やってきたことのなかで、いいな、日本にも取り入れたいな、と思うことを、本当にそのまま伝えていいのか。きちんと、海外にある良さ、日本にある現実を学び、情報交換していきたい」
岡崎が海外生活のなかで感じてきたこととはどんなことなのか。「Dialogue w/~世界への挑戦状」をスタートさせるにあたって行われたlive配信の内容を全3回に分けて紹介する。(2回目)
1回目:岡崎慎司が語る、「選手としての情報発信」に疑問を抱いた過去
(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69696)
レスターで得た「ひとつのスタイル」
――レスターでプレミア制覇をしたときは、チームのために走り回り、その評価を上げました。
あのすごい選手たちの中で「こいつらのために動いたら、最後は自分においしいところがまわってくる」と思えたから頑張れた、っていう部分があるんですよね。
結局それって「自分のために」やったからだと思うんです。その感覚が、今にも影響している。
あのときは「未到」(プレミア制覇の1年を振り返った岡崎の書籍のタイトル。優勝の喜びより強く感じた悔しさが綴られている)で、今も当然「未到」。それは変わらないんですけど、あのときが成功体験にもなっているというか……、1つの答えだと思っていて。
プレミアリーグはそれ(チームのために献身的にプレーをする)をやって、その後、スペインに移籍してもどこかであのときのスタイルを持っていた。