危険な情勢をさらに危険にする

 バイデン大統領のこれらの発言について、上院外交委員会の共党側有力メンバーのジム・リッチ議員は、「バイデン大統領の“プーチン除去”発言はウクライナ戦争に対する米欧側の団結を崩し、ロシア側を硬化させて、戦争のエスカレートを招きかねない。その点できわめて危険だった」と述べ、バイデン大統領には政策に関連する言語のコントロール能力が欠けている、とまで批判した。

 民間の大手外交政策研究グループ「外交問題評議会」のリチャード・ハース会長も、バイデン大統領の矛盾発言は「多方面の関係者の間に誤解を広げることで、すでに危険な情勢をさらに危険にする」と論評した。

 ちなみにバイデン大統領は台湾についても、「中国が台湾を武力攻撃すれば、米国は必ず台湾を防衛する」とこれまでに3回ほど発言している。しかしいずれの発言の際も、直後にホワイトハウスや国防総省、国務省の代表が「台湾防衛は米国政府の明確な政策とはなっていない」として大統領の言葉を否定している。

 国際危機が高まれば高まるほど、米国大統領の統治能力、実務能力が問われる度合いが高まるというのは自明の現実である。そのため、まさに今、バイデン大統領の職務遂行能力の危険性が指摘されるわけだ。