大統領選に勝利した尹錫悦氏(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(田中 美蘭:韓国ライター)

 3月9日に、第20代韓国大統領選挙の投票日を迎えた韓国。現大統領の文在寅氏が当選した5年前は、朴槿恵前大統領が友人を私的に国政介入させていたなどの疑惑から罷免となり、国民の怒りと関心も相まって選挙戦は大いに盛り上がった。だが、今回は有力候補者には投票の決め手となるような「決定打」が乏しく、事前投票での不手際や不審な点が浮き彫りなどなど不信感を残す結果になった。

 最終的に与党「共に民主党」の李在明氏と、野党「国民の力」の尹錫悦氏の一騎打ちとなった今回の選挙戦──。期日前投票では過去最高となる36%の投票率を記録。3月9日の投票日当日は朝から晴天にも恵まれ、午前6時より各地の投票所での投票が進んだ。

 12時時点の全国平均の投票率は20%だったが、午後からは各地で投票率が急速に上昇し始め、午後3時では67.2%、午後6時には75.7%に達した。最終的な投票率は77.1%で、前回(5年前)の大統領選挙をわずか0.1%下回る結果だ。最終的には。保守の尹錫悦氏が接戦を制した。

 韓国では依然、新型コロナの新規感染者数が増え続けており、今回の高い投票率は大統領選に対する国民の関心の表れだろう。ただ、2002年以降の大統領選を見てきたが、今回の大統領選挙を率直に言えば、「かつてなく盛り上がりに欠けた選挙」だった。

 文在寅政権への批判は根強いが、前回の朴槿恵前大統領罷免のような国民が大きく盛り上がるような政治的な出来事がなかった上に、候補者の公約も、有権者を惹きつけるような訴求力に欠けていたからだろう。

 国民が特に重要視している「経済」については、各候補者とも「支援」や「若者」というキーワードを盾に「バラマキ」とも言える経済政策を掲げており、中長期的に韓国経済を改善させていくというビジョンが見えなかった。