近年、自社のファンづくりに取り組む企業が増えているものの、成果を上げられないケースも多い。その原因はファンを獲得するために「まず何をすべきなのか定まっていないから」と、マーケティングの専門家は「ファーストフォロワー」の獲得を提唱する。本連載では、ファンづくりに成功しているメルカリやヤッホーブルーイングなど12社への取材をもとに解説した『ファーストフォロワーのつくりかた――事例で学ぶ「製品・サービスの価値をファンと共に生み出す」ためのマーケティング』(高橋遼著/翔泳社)から、内容の一部を抜粋・再編集。
第1回は、TED Talksで話題となったプレゼンを紹介。「ファーストフォロワー」が大きなムーブメントの発火点になることを、ある野外フェスでのエピソードを例に紹介する。
<連載ラインアップ>
■第1回 TED Talksで話題、なぜ1人の変わり者から巨大なムーブメントが生まれたのか(本稿)
■第2回 なぜ「ファーストフォロワー」は、良質なクチコミを生むことができるのか
■第3回 約3610万人の潜在顧客にどう接近? メルカリのコミュニティ戦略の見直しとは
■第4回 無印良品の熱狂的なファンが、なぜ「メルカリサロン」にスカウトされるのか
■第5回 「メルカリ先生」とつくった「メルカリ教室」は、なぜ価値を生み出すのか
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ファーストフォロワーとはどのような存在か
■周囲を巻き込む力
2010年に配信されたTED Talksのなかに、Derek Sivers氏による「How to start a movement」というプレゼンがあります。社会運動が起こるきっかけについて解説したもので、当時アメリカ国内でも話題になりました。
このプレゼンの冒頭では、とある野外フェスの会場で撮影された動画が紹介されています(図1-1)。その動画は、1人の上半身裸の男性がフェス会場の音楽を聴きながら、少し変わった奇妙な踊りを踊っているところから始まります。最初は1人の変わり者が踊りを踊っているだけなのですが、どこからともなくもう1人の参加者が彼に近寄ってきて、同じような踊りを踊り始めます。そして、後から来た参加者がはじめに踊っている彼の踊りを周囲にアピールするように踊り出し、徐々に周りからその様子を見た人が集まってきます。すると、最初は相手にしていなかった周りの傍観者が、次第に彼の踊りに参加し始め、いつの間にか「参加しないと損」とすら思わせるような、巨大なムーブメントに発展していくのです。
このTED TalksでプレゼンをしているSivers氏は、この動画を例に挙げ、自分が先頭に立ち、周りを牽引するような従来のリーダーシップが過大評価されていることを指摘しながら、最初のフォロワーシップを発揮した人物の重要性について解説をしています。つまり、大きなムーブメントをつくるための着火点として重要なはずの最初のフォロワーシップは過小評価されており、最初のフォロワーシップも、実はリーダーシップの一形態であると述べています。
Sivers氏は、この最初のフォロワーシップを「ファーストフォロワー」と呼び、社会運動が起こるきっかけとして、その存在の重要性を説いています。